タフタット語造語ログ

目次

1. 既存35語

2021/04/05時点で辞書に記載済みの

rhosh, taftarl, forl, cot, barl, fenkhyc, turl, norl, shyt, xesh, 
siborl, rarl, ratsiborl, nirl, taftanirl, rhabiyarl, rhabiyanirl, fijurl, mat, xokhutirl, 
josh, -(a)k, fyt, synicarl, -vez, mady, vurosh, osh, cyrl, bocot, 
-zen, darl, gyt, rharl, gat

の35語(助辞が3つあるが、便宜上「語」として扱う)について記憶を頼りに造語の経緯を書いていく。

1-0. 単純な対応だけで分かるもの

祖語の母音は現在a, i, u, e, o, ö, ü, əの8つであったと考えられている(正確にはラッビヤ語でこの8つが確認されているためこうなっているだけで、ここから割れる可能性は十分ある)。
öがoへ、üがyへ行き、əは各種の母音へ行った。ʃはそり舌化してʂになった。

1-0-1. 語末でのr>ɹ

barl, turl, rarl, nirl, cyrl, darl, rharlの7つ。

1-0-2. -x修飾詞の-t形容詞化

shytが当てはまる。
語末xは祖語で修飾詞を示す接辞であったがタフタット語では脱落、名詞の属格語尾-tに影響されて終止形で用いるものや語との結びつきが強いものは-tがつくようになった。-tのつかなかったものの多くは代償延長により語末の母音が長くなっている。

1-1. 個別の説明を要するもの

1-1-1. rhosh
ラッビヤ語ghosh /ʀoʃ/と同根。ghoshは「【動詞】座る、在る、ある、(-nを-mは)持つ、所有する」の意味(-n=主格, -m=処格)。現代塔語でrhoshが「座る」を持つかどうかは未考察(おそらく失われた義)。

1-1-2. taftarl
民族名としてほしかっただけなのでラッビヤ語との対応とか何も考えてないよ。したがって語源不明。

1-1-3. cot
ラッビヤ語țökhに同根。țは/t͡s/や/ʈ͡ʂ/あたりの音と考えられているが、有識者不在のため詳しい音価は不明でありタフタット語では/t͡s/に合流したと設定。

1-1-4. fenkhyc
鳥の名前、語源不明!ただし*fent + *jyc(V)-という分け方が提唱されている。おっと初の二重子音。

1-1-5. norl
ショクレー語lue /luə/からの古い借用。祖語からl>nの変化を経る前に借用され、uəがuの円唇性とəの開きを持った母音であるoへ統合され、名詞たちと挙動を合わせるため(かはわからないが)-rlがついた。

1-1-6. xesh
ラッビヤ語khesh /xeʃ/「生きる」と同根。xeshにある「住む、〈与 として〉暮らす」は派生義であるが、ラッビヤ語にもこの義が存在するかは不明。

1-1-7. siborl
音素の乱択で生成。ラッビヤ語bo-「流れる」との関連を意識して、辞書には「概念としての『流れる時間』が本義」と記述されている。

1-1-8. ratsiborl
rat(<rarlt)+siborlの合成語。古語(=祖語から分化した古い塔語)では属格はラッビヤ語と同様に前置修飾だったと考えられ、他の語にも-rlが-tに変わって修飾しているものが見られる。

1-1-9. rhabiyarl
ラッビヤ語からの借用。借用であることから分かるようにラッビヤ人らがラッビヤを自称したのは分化の後であるが、祖語の時代に自称が何であったかは不明。

1-1-10. taftanirl, rhabiyanirl
1-1-8.で触れた属格の前置修飾で出来た語であるが、taftatnirl, rhabiyatnirlの-tn-からtが落ちたことで-n-となって現在の語形になった。表記分けはされないが代償延長としてtの前は長母音である。これらはタフター・ポータルにある「タフターニ」という転写に合わせて決まったものであるが、特に無理なく設定出来たためこれで通すことにする。

1-1-11. fijurl
fi(小さい)-ju(頭)-rlで生成。属格での生成でなく語素連結によるラッビヤ的生成であり、祖語から引き継いだと考えられる。

1-1-12. mat
ラッビヤ語matukorなどにあるma(これ)の修飾詞形/max/から1-0-2.の変化を経てmatとなった。わかりやすく他の語との結びつきが強い言語であり、短母音である。

1-1-13. xokhutirl
街の名前。語源不明……ではあるがxo(雪)との関連が指摘されている。

1-1-14. josh
ʃ>ʂ以外の音変化なし。おそらく構文の変化もなし。

1-1-15. -(a)k
ラッビヤ語にある動詞の接辞-(ə)kと同根。タフタット語では動詞だけでなく形容詞にもつく。

1-1-16. fyt
fy(遠い)からmatと同様のプロセスで形成。同じく短母音。

1-1-17. synicarl
ショクレー語のsylitia「学校」から借用。l>nを経ていることから考えてもおそらくnorlに近い時期、あるいはそれより前の借用と考えられる。

1-1-18. -vez
語源不明。vezに語形の近い「力」などの語が存在する/した可能性がある。

1-1-19. mady
再構形は*madʲi-。*dʲy-はラッビヤ語のjü /dʒy/と塔語のdyから再構された。古くは修飾詞だったが1-0-2.の変化で語末のxが落ちているため、yは長母音。

1-1-20. vurosh
再構形*ɫuro-。/ɫ/(いわゆる"暗いL")はラッビヤ語では残ったがタフタット語ではvに合流した。*ɫu-「草」*ro-「引く」で、辞書には「『大地から引き抜く』が本義」と記述している。

1-1-21. osh
ラッビヤ語hoshと同根。/h/はタフタット語では基本的に脱落した。

1-1-22. bocot
bo-「流れる」co-「落ちる」で「流れ落ちる」(辞書では「流れ来る」と表記)。siborlと合わせると「時間」や「続く」などの概念は「流れ」をコアイメージに持つと思われる。

1-1-23. -zen
xelkenの話していた(今も?)古理語seleneからの借用の末裔。l>nを経たことでzeneneになり、縮約と末母音の脱落が起きた結果この語形になった。

1-1-24. gyt
ラッビヤ語の後置詞güzからの借用。タフタット語からは前置詞や後置詞という概念がなくなっており形容詞扱いされることになった結果、自然な音韻変化もしくは他からの類推によってz>tが起きた。

1-1-25. gat
もともと「1」を表す/ʀaɹ/と同じ発音であったが、「同じ」の意味には摩擦音化した/ɣaɹ/を当てるようになってgで綴られるようになり、更に/ɣaɹ/が形容詞になった結果rhar, gatという2つの語形が生まれた。ラッビヤ語で「同じ」が「1」の分化イメージであるかはunattested。

2. 比較言語学part1

2-1. 人称辞

人称辞にはあまり差がない。タフタット語の2人称はほとんどの場合母音が後続するので有声化している。

人称タフタット語ラッビヤ語再構形(一例)
1人称-n-n*-n
2人称-d-t*-t
3人称-m-m*-m

2-2. 格活用辞

まず、2言語の活用辞の一覧とその再構形の例を示す(再構形は単数のみ示す)。

タフタット語ラッビヤ語再構形(一例)
単数複数単数複数単数
対格-fin-in*-f
主格-nan-nin-n-nin*-nn
奪格-s-sin-k-kin*-ḱ
与格-gum-gin-m-min*-gm
属格-t-tin-t-tin*-t

奪格は塔語では処格と呼ばれているが、ラッビヤ語では処格が与格に吸収されて奪格・具格として1つの格を成しているためこう表記する(塔語の処格は奪格と具格へ合流している)。

「摩擦音を活用辞にしたいな」→「kが接辞か、ḱ>k, ḱ>sが印欧語に例あるしsで行けるやろ」で*-ḱを再構形に設定。

-gumと-nanは人称辞が比較的手を加えずに取り入れておりそのまま入れるのが嫌だったので無理のない脱落を目指して付け足した。SYに再構形がどんな風になるかを訊いたところ「*-nnと*gmあたりとか母音挿入で解決するパターンと脱落で解決するパターンで分かれやすそうでいいんじゃない」と返って来たのでそれで建てることにした。

複数対格はラッビヤ語では-inがつくが、塔語ではɹの後に母音が来るのが禁則であり、かつɹでなくなるというのも直感に反したため、何か子音を再構形に持ってくることになった。落ちやすい子音であればなんでもよかったが、*-vよりは*-fの方がそれっぽそうだったので*-fで建てた。単数の対格では*-fはどちらでも落ちて無標になっている。

2-3. 白活用・黒活用

これはマジでよくわからん、祖語にはたぶんなかった。どこか我々の知らない言語の文法が混ざっていると考えた方が自然な気がする。

2-4. 助辞

「Q.なんで生えたの?」「A.後置詞とかが一体化したんじゃないですかね」
さすがに白活用と黒活用に加えて助辞まで別のところから借りてたら文法借用先を作るのが難しくなるのでしない、そんな気力もないし。

2-5. 不活用名詞の連言修飾

これは現代理語とかの影響を受けていそうな気はする。ラッビヤ語とかも借用で規範に合わない語が増えているので、無理のある設定ではなさそう。